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[ 文庫 ]
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蝉しぐれ (文春文庫)
・藤沢 周平
【文芸春秋】
発売日: 1991-07
参考価格: 700 円(税込)
販売価格: 700 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円~
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・藤沢 周平
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カスタマー平均評価: 5
青春物語 父の死、淡い恋、友情、様々な思惑が渦巻く藩内の抗争
…巻き込まれ戸惑い成長していく主人公、牧文四郎の物語。
最終章でお福さまの「文四郎さんの御子が…」という台詞は何回読んでも胸にじーんとくる。
数年前にみたNHKドラマにはまった当時の私の印象では恋愛物語のイメージが強かったが、文四郎をはじめ若い武士たちの活躍を描いた爽やかな物語だと分かった。
「橋をかける」前から読みたいと思っていました 美智子皇后様の国際児童図書評議会における基調講演のビデオを一部拝見したことがありました。詳しく活字で読みたいと思っていましたところ今回文庫特装版で出版されたことを知り早速注文しました。本屋さんで探すよりも手軽に手に入ります。送料の関係で「蝉しぐれ」も頼みました。美智子皇后様のお言葉は幼少のころからの読書体験から語られ、現在の深い慈愛に満ちたまなざし、生き方そのものにつながられていることを知り、幼少の読書がいかに大切かを実感させられます。「根っこを与え」「翼をくれ」「悲しみや喜びにつき、思いめぐらす機会をあたえてくれた」と述べられていましたが若いお母様方に是非読んでいただき、お子様を心豊にはぐくんで欲しいと願う本です。
良質な時代小説のお手本 舞台、主人公の年齢設定、心理描写と風景描写、筋書きの芯となる苦難と陰謀、友情と淡い恋、剣と成長。これらを組み合わせたバランスがよい、テンポがよい、無駄がない。
時代小説になじみのない若年層から、歴史もの時代ものをいろいろ読んだ熟年層まで(そういう人はすでに読んでいるだろうが)お薦め対象者を選ばない。
それにしても日本人というのは、うだる夏空の蝉しぐれに包まれると、遠い少年・少女の日に自動的にトリップしてしまう仕様になっているみたいだ。
一途な武士の生き方 所謂”侍”という存在には違和感もあり理解しがたい世界で
あったが、主人公:文四郎を通して、一途な日本男児の生き様
を教えられた感じである。
冒頭に描写されている夏の小川から全編を通じて爽やかな
清涼感が全編に渡り漂っているが、父の切腹や家禄の召し上げ
など主人公:文四郎を取り巻く環境は厳しい。
それでも残された母の厳しさと幼馴染みとの友情もあり男らしく
成長して行く。
また、お互いに初恋の人を心に秘めたまま、それぞれが置かれた
自分の立場をわきまえて、気持ちに整理をつけるラストシーンも
人間臭さが描かれており、親近感を覚える件であった。
信じられない!! そんなにたくさん本を読んでるわけではないので
よくこの本は何度も読み返したくなる?とか、擦り切れるまで読む?とか
理解できなかったし、好きな本に対するお決まりのほめ言葉としか見てなかったけど
この本を読んでその気持ちがよく分かりました。
もう何度も読み返してるし、きっとこれからも何度も手に取ると思います。
すごいよかった。
初めて時代物を読んだので最初はすごく読みづらい気がしたけど
すぐなれました。
文四郎のまっすぐさや、闘うときの緊張感もすごくいい。
でも、何より言葉では表せない雰囲気や空気がありました。
しばらくするとその雰囲気が恋しくなって思わず読み返しちゃうんです。
こんな気持ちになれる本とは後にも先にもこの一冊だけだと思います。
読んでよかった。
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[ 文庫 ]
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新装版 雪明かり (講談社文庫)
・藤沢 周平
【講談社】
発売日: 2006-11-16
参考価格: 750 円(税込)
販売価格: 750 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 320円~
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・藤沢 周平
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カスタマー平均評価: 5
ハードボイルドな人間模様 四十を超えて初めて読んだ時代劇小説です。
暇つぶしに手に取った文庫でした。
しぶい。とてつもなく、しぶい。
チャンドラーやエルロイや北方(現代もの)とも違う、人間の襞の描き方。
心に染み入る文章とはこのような文章なのでしょう。
日本のハードボイルドとは、時代劇にあったのですね。
「穴熊」は、まさに絶品でした。
潔癖、完全は、時に、絶望的な自己満足になってしまうということが、
悲しくもあり、高貴にも感じました。
藤沢周平を読まなかったことを悔やみ、読んだ偶然に感謝します。
藤沢周平の真髄 どの短編も傑作ぞろいでひとつとしてはずれは、ない(当然だが)。
その中でも
「入墨」・「潮田伝五郎置文」・「穴熊」の3篇の切なさを味わって欲しい。
この3篇は主だった登場人物それぞれが、他人を思いやることで切なさを訴えてくる。
「切ない」・・・よく聞くし、使う言葉であるが、
この3篇で本当の「切なさ」ということを知ったように思う。
主人公だけでなく、さまざまな登場人物の気持ちになって
これら短編を味わいつくして欲しい。
何度も読まないと、そのよさすべてが、わからないだろう。
藤沢周平って、やっぱり多感な高校生の頃に読むといいと思うなぁ。
ものすごく深い人間になりそうだ。
珠玉の短編集 藤沢作品が今日の私たちの心を打つのは、パソコンや携帯電話やテレビ、電気・ガス・水道などモノにあふれた生活を享受する一方で、心がさみしいからではないだろうか?この作品に登場する人物はみな、貧しいながらも懸命に生きたり、博打打ながらもなんとかそこからの脱出を図ったりと、一日を一生懸命生きている人物が描かれている。
現在の日々の生活にちょっとした疑問を感じている方には、まさに読むべき一冊だと思う。
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[ 文庫 ]
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用心棒日月抄 (新潮文庫)
・藤沢 周平
【新潮社】
発売日: 1981-03
参考価格: 740 円(税込)
販売価格: 740 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円~
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・藤沢 周平
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カスタマー平均評価: 4.5
青江又八郎の活躍、始まり始まり! 何巻も発行されている読み物を読むとき、我ながら不思議なクセがある。
それは、最新刊を読んでしまうことだ。
子どもの頃、巨人の星のコミックスも、ぼくが持っていたのは、ただ1冊、第16巻だった。
大リーグボールでオズマと戦うところだったと思う。
タイガーマスクのコミックスも第8巻だけ持っていた。こちらはザ・コンビクトとの対戦だった。
読み始めるなら第1巻から読むべきなのだろうが、なぜかいちばん新しいのがいいような気がするのだ。
この「用心棒日月抄」も青江又八郎が活躍する小説の第1巻に相当する。
そして、ぼくは、これ以外のシリーズ3冊を読み終えて、最後に最初のシリーズを読んでしまったのだった。
それはまるで謎解きを楽しむかのように。
大人になって知り合った親友の故郷を訪ねるときのように。
懐かしいような、ほっとするような。
青江、ここから物語が始まったんだ。苦労したんだね、と話しかけてやりたいような。
そんな温かい気持ちで、最後まで読み続けることができたのだった。
市井から見た赤穂浪士討ち入り 東北の小藩の馬廻り役の青江又八郎は、藩内での陰謀に巻き込まれ、脱藩して江戸で浪人生活を始める。剣術の腕を活かして用心棒稼業で生計を立てるが、仕事をこなしていく中で、国元からの刺客と闘ったり、赤穂浪士や吉良家の策謀にそうとは知らずに関わったり、とスリリングな体験をすることに・・・・・・
藩内の権力闘争を縦糸に、そして赤穂浪士の吉良邸討ち入り事件を横糸に、青江又八郎の用心棒としての日々を綴った連作短編。死と隣り合わせの危険な毎日が描かれているわけだが、同時に貧乏浪人としてのつましい暮らしぶりも浮き彫りにされており、権謀術数と庶民生活のギャップが面白い。きな臭い仕事を何食わぬ顔で紹介する口入屋の相模屋吉蔵や、浪人仲間で豪放磊落な細谷源太夫など脇役の人物設定も巧妙。
藤沢ワールドを存分に楽しめるシリーズ 時は元禄 忠臣蔵の事件の少し前、青江又八郎は藩内の政争に巻き込まれて脱藩し江戸で用心棒として生活していた。
藩からの刺客をかわし、用心棒としての役目をこなすうちに、大石内蔵助を中心として浅野内匠頭の復讐を誓った赤穂浪士の面々との危険な接触が増えていった・・・
忠臣蔵を伏線として、脱藩者の孤独と悲哀を江戸の市井から照らし出す藤沢ワールドの傑作。
主人公が負った深い業が江戸の暮らしの中で、自身の生きる意味を深く掘り下げていく重厚な流れは、読み手が物語に取り込まれていくような感覚に襲われます。
主人公と剣客が対峙した張りつめた空気と剣捌きの描写は息をのむものです。
どっしりとした時代小説を楽しみたい方にぜひ読んでほしい一冊です。
一点注意したい点としては、ぜひ忠臣蔵の概要を把握してから読まないと楽しみが減ってしまう点です。
赤穂浪士 山形新幹線の座席前にいつもある、旅のFREE PAPERで紹介されていたので、気になっていました。でもなかなか出会えず、今になって読了。又八郎の用心棒稼業の短編集であるが、赤穂浪士討ち入りの臭いを振りまきながら、物語は進む。時代小説はちょっと、という人は騙されたと思って手に取ってみてください。一流のエンターテイメントの物語です。用心棒というくらいなので、剣を交えるところもあるし、ラブロマンスもあります。そうなのです、本書は女性の描き方が誠に素晴らしいのです。そんな中、武士の誇りを失わない青年、又八郎の用心棒稼業が描かれています。おもしろくないわけありません。まさしく、スリルとサスペンス盛りだくさんな書なのです。
軽く,そして深い時代小説。 時は元禄。藩主暗殺の陰謀を耳にしたことを発端に,その一味である許婚の父親を斬り脱藩。江戸に出てきた青江又八郎は,江戸で用心棒稼業で糊口をしのぐ。国許から放たれる刺客との闘いと,松の廊下刃傷事件から吉良邸討ち入りまでの浅野浪人の動きも交えながら,江戸の日常を描きます。
派遣先で漏れ聞く吉良邸討ち入り計画。内蔵助を始めとする浅野浪人たちと近づきながらも,肝心なところで彼らとの斬り合いを回避(笑)。忠臣蔵という歴史的事実を曲げないまま,見えない部分に想像を働かせて料理してます。
連作短編と言いながらも長編的要素があり,終盤の2,3章は読ませました。特に最後の「最後の用心棒」はジーンと来させます。ああ,作者の術中にはまったか,と。
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密謀 (上巻) (新潮文庫)
・藤沢 周平
【新潮社】
発売日: 1985-09
参考価格: 620 円(税込)
販売価格: 620 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 126円~
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・藤沢 周平
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カスタマー平均評価: 4.5
サラリーマンの生き方指南としても参考になると思いました 印象的だったのは、上杉景勝が徳川家康への降伏を決断する時の言葉でした。
サラリーマンにも参考になる言葉だと思いました。
「自分は家康のような天下人ではなく武者だ。戦場のことなら誰も恐れないが、政治好きではないし、それを行う器量も無い。」
負け惜しみでもなく、己を知って本音からそのように言い切れる。カッコ良さを感じました。
サラリーマン社会でも、偉い地位を目指すのも良いし、はたまた専門分野で仕事人になるのも良いし。そのような中、後者的な人間には目の覚める言葉だと思います。
石田光成と直江兼続 大河ドラマの原作「天地人」よりも面白そうなので、こちらを手に取りました。
織田から豊臣、徳川へと天下が移っていく中で、上杉がどのような行動をとったのか、策士直江兼続の智謀を元に描かれます。
その時代に活躍したであろう間者の行動も物語に彩りを添えていてとてもおもしろい。
個人的には、上杉といえば上杉謙信しか思いつかなかったのに、上杉景勝に光が当てられ
さらに上杉家が綿々とつながっていき、次に読んだ赤穂浪士につながっていくのが興味深い。
石田光成と通じていながら関が原には参戦せず、家を守った上杉景勝の判断に惹かれました。
歴史小説は苦手なのだが… 今年の大河ドラマの直江兼続を扱った小説であるということ、ほとんどの戦国大名が登場してくるというレビュー(これ一冊読めば、大方のことが分かるかな?という横着心)、さらにお気に入りの藤沢周平の小説ということで読み始めた。 何しろ信長、秀吉、家康くらいしか知識がない(笑)。 あとはせいぜい明智光秀、武田信玄、上杉謙信の名前だけは知っている程度。 3分の1くらいまでは、何度も投げ出そうと思った。 が、しかし、豊臣秀吉が力を増していくあたりから、すらすら読めるようになった。 私の印象でも、前半は秀吉、後半は石田三成と、謙信亡き後の在りようを探る上杉家中を、兼続の目を通して描いた物語と感じた。 読み終えて、まず「秀吉亡き後、なぜ家康だったのか」 「石田三成とはどういう人間だったのか」 「今一つ知られていないが、 景勝は謙信というカリスマ亡き後、まずまず上杉の家を堅実に守ったのではないか」 これらのことを作者は述べたかったのではないか、と感じた。 才気走っていたが、愛敬にかけ、今一つ人望が得られなかった三成、謙信の生きた時代とは違う情勢のもと手堅く上杉家を守った景勝の横顔が、くっきり見えて来るような小説である。
政と業 政治と業界ではなく、
「まつりごと」と「ごう」です。
直江の話しよりも、秀吉、家康の権力欲の
凄まじさを直江の口から説明させている感じです。
そして、景勝の佇まいが、藤沢調で凛とした感じを
際だたせています。
某TVの主役よりも、俄然、景勝に興味を持ちました。
個人的には、本筋ではない静四郎の話しが好きでした。
どうせ読みますので、上下巻で購入すべきです。
大人っぽい時代小説 藤沢周平というと最近の映像化ブームで「夫婦愛」「庶民派」みたいな印象がありますが、実際には時代小説の短編などでも文章がとても上手くて、
軽妙洒脱、そして穏やかな主張はあっても、それが決して押し付けがましくない点も美点だと思われます。
数年前、最初にこれを読んだ時、藤沢さんの時代小説は初めてで、上巻は私が有名武将しか知らない為に少し苦労しましたが(日本史オンチだったので;)中盤以降はどんどん面白くなってきます。
さりげない言葉や文章での心情描写はさすがという他ありません。
藤沢作品なのであからさまに敵対する武将を悪く書いたり、上杉を贔屓したりという描写は少ないのですが、その分読み手としては想像力を働かせる余地があるという印象です。
この作品を読むと「義」を掲げながらも一面では冷静沈着な知将だった直江兼続、謙信の精神をそのまま受け継いだ上杉景勝贔屓になりますね。
兼続を「いい人」すぎる人に描写していないのに、彼の生き方には感銘を受けます。
景勝も男が惚れる武将だったことがわかります。
そして、この時代は草(忍者)を使うのが当たり前だったこともわかります。
三十石に減らされてからの話もこの文章で読みたかった気はしますが、繰り返し読みたくなる余韻と深みのある作品です。
「直江と石田が密約を交わしたという証拠はない」とした上で書かれているのにも好感が持てました。戦国武将の人間性を描きながらも、捏造だらけという印象はありません。
兼続にまつわる女性達の描写がほぼないのが原因かもしれませんが、これが大河の原作がこれだったらなあ…と残念になります。
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たそがれ清兵衛 (新潮文庫)
・藤沢 周平
【新潮社】
発売日: 1991-09
参考価格: 580 円(税込)
販売価格: 580 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円~
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・藤沢 周平
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カスタマー平均評価: 4.5
こんなふうに、強く優しくそして精一杯の人生を送ってみたい たそがれ清兵衛は第26回日本アカデミー賞を受賞した映画「たそがれ清兵衛」の原作だが、映画はこのほかに、藤沢周平の「竹光始末」と「祝い人助八」を原作としているが、「祝い人助八」のこの短編集「たそがれ清兵衛」に含まれている。
全部で8編の短編小説から構成されているのだが、どれも藤沢周平らしい小説ばかりだ。
主人公は、剣の達人であるが剣客としては生きていない。今の生活を精一杯生きている。
彼らにとって、剣は最優先事項ではないのだ。
しかしながら、すごい剣豪なのだ。
ま、だから今の生活を最優先に生きていけるのだろうけれど。
こんなふうに、強く優しくそして精一杯の人生を送ってみたいものだ。
藤沢さんらしい1冊 映画化もされた表題作を含む8編からなる短編集です。8編に共通するのは、主人公達は、みな、剣の秘術を持つ達人でありながら、普段は、それを出すことがない点。それどころか、うだつのあがらない下級武士たちであり、その性格から、「ごますり」「日和見」「だんまり」等々の有難くないニックネームを頂戴してしまっています。
ですが、お家騒動や家族が事件に巻き込まれたとたん、その秘術でもって、騒動を修める働きをします。しかし、それが終わると、また、元通りの、うだつのあがらない日常生活に戻っていきます。この剣のスーパーマンぶりと、日常の惰性の対比性が面白いのですが、読後さわやかな感じを受けるのは、人間、かくありたいと思わせる魅力を持っているからでしょうか。
藤沢さんの短編集らしい、面白くて、爽快な1冊です。
胸を打たれる時代小説短編集 「そのお役目、余人に回してはいただけませぬか。」
上意討ちの討手を依頼された勘定組井口清兵衛は労咳の妻を思いなんとか断ろうとするが、妻を名医に診せることを条件に討手を引き受ける。
重職会議では上意討ちのための弾劾を始めるところだが、討手の清兵衛はまだ現れない・・・
全八編を収めた短編集で、剣の達人でありながら悲哀に満ちた男を描いたものが多い。
清兵衛のように労咳の妻の介抱に時間をささげたり、剣の腕とは裏腹にごますりに精を出すものなど、男の悲哀とプライドと闘いを巧みに描写しているところがさすが藤沢作品というところ。
胸を打たれる小説が読みたくなった人にオススメ。
人の生き様、人生とは… 藤沢周平の作品をはじめて読みました。
時代小説は「池波正太郎」ばかり読んでいました。
池波作品とちょっと違います(読後感、余韻、人物像?)が、別の意味で楽
しめた作品でした。
この短編集は、それぞれの人(主人公)の生き様を描いています。
それも身分の決して高くない、日々を普通に生きているだけの武士が主人公。
その日々の生活を護る為の生き様。
武士としてより侍として、いや人としての物語集でした。
満足でした!
映画は「蝉しぐれ」「武士の一分」を観ました。
「たそがれ清兵衛」の映画はまだ観ていないので、DVDを観てみます。
さあ?次はどの作品がいいかな…。
若い人でも読んで楽しめる 時代小説にまつわるイメージによって
この種の小説をなんとなく遠ざけていたのですが…。
素直に面白かったです。
若い人が読んでも、楽しめる。
エンターテイメント小説だと思います。
(そんな風に言ったら、失礼かもしれませんが)
内容については、私は、この小説をヒーローものとして捉えました。
冴えない主人公が、実は抜群の能力を持ち
多くはないが誰かのヒーローとなる。
そのカタルシスがたまらないです。
今まで時代小説として敬遠してしまっていたことが、
もったいなかったと思わせる小説でした。
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玄鳥 (文春文庫)
・藤沢 周平
【文藝春秋】
発売日: 1994-03
参考価格: 500 円(税込)
販売価格: 500 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円~
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・藤沢 周平
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カスタマー平均評価: 4.5
心に負い目を持ちながら生きる男たちの姿が共感を呼ぶ
相変わらず藤沢作品は読みながらしんみりさせる。
剣士として名をはせながら、護衛に失敗、上意討ちに失敗した男、商人から受け取った献金を盗まれ左遷された男、藩主の御前紅白試合で負け面目を失った男。
でも生きていればいいこともあるんだよね。
そんな下級武士たちの気持が自分の胸にしみわたる。
リベンジの御前試合での剣さばきは目に焼きつく臨場感でカッコイイ!
ちょっと物足りない。 藤沢周平といえば、「しがない」風采の主人公が内面にはしっかりとした心意気を持って、剣を取れば負けることのないという武士を描く人だと思っているのだが、登場人物が生き生きとしていない。
エピソードが弱いのだ。もっと深く描いてほしい。
短編にするのでなく、長編で描いていけば、もっと良かったのだと思う。
解説も良い 藤沢周平の作品は大好きです。
文章は読みやすく、無駄な言葉がありません。
ストーリーに無理がなく、納得しながら読み進めます。
それでいて、読後の余韻が深い作品ばかりです。
本書で印象深かったのは、「幻鳥」「鷦鷯(みそさざい)」でした。
解説は、中野孝次 氏によるものですが、藤沢作品の特徴を次のように
書いています。
1.文章のよろしさ。
2.登場人物の人間性。
3.剣の立合いの描写のみごとさ。
4.友情。
5.自然描写のよさ。
6.食いものの描写のよさ。
7.人間のよろしさ。
8.女の姿と心のよさ。
まったく同感です。
藤沢周平って、上手いよなあ 5編からなる短編集です。藤沢周平ファンであれば、おなじみでしょうが、どれも、思わず、「上手いよなあ」と思わせる掌編になっており、数ある短編集の中でも、お気に入りの1冊です。
藤沢周平氏が描く人物は、殆どの場合が、どこにでもいそうな、無名の武士や市井の町人なのですが、その生き様を描ききり、それが、例え哀しい結末であても、最後には「人間っていいよなあ」と思わせるものになっています。
ですので、1回読んで、どこかにしまってあったものでも、しばらく経ってから、「また、あの話が読みたい」と思い、再読、再々読・・・させられるものが多いですね。
読書子にとっては嬉しい、そんな珠玉の1冊です。
後味すっきり、大満足! *5編の侍もの短編集。藤沢円熟期作品に大満足。
■「玄鳥」 :
こういう小説を読むと、「藤沢周平ってホントに上手いなー」って唸ってしまいます。
さて、兵六は生きて逃げれるか? 燕は戻ってこないのか? 来年も戻ってきて欲しいなー。
■「三月の鮠(はや)」 :
これ面白いね。
実力では勝っているものの、周囲の期待が大き過ぎて藩主の前での紅白試合で無残に破れた侍。
その後全くやる気を失せ、山中の川釣りばかり行ってたことでいつの間にか足腰が鍛えられ、いざ勝負の時、
「おー・・」 思わぬ力が・・・。それもこれも美しき巫女の力か?
■「闇討ち」 :
悲しい 侍の仇の話だけど、最後はそれなりにすっきり!?
私もこんな台詞を憎き奴に吐いてみたい。
「御中老、“闇討ち”とは かような具合にやるとよろしゅうござる!」
ブスッ! あ・・・aaa ,uuu,・・・
馬鹿たれがー! 死ね!(*おっとハシタナイ、失礼)
■「鷦鷯(みそさざい)」 :
何とも、男親と可愛い娘の物語。
やはりどんな男が来ても気に食わぬもの。でも、剣術が優れていると得だなー。
そして、今も昔も男親は変わらないなー。
■「浦 島」 :
最高です!!(巨人の阿部のノリで)
大好きです こういうの!
いかにも、藤沢作品!
いいなー、5つの短編集だけど、これだけでもう十分満足。
これ 映画にも出来そうな作品ですね。
もう、こういう人間に私も成りたい!
この「浦島」が表題名でも良いんじゃないかなー。
最高です。とにかく最高!
■ お薦め度:★★★★★(大満足!)
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三屋清左衛門残日録 (文春文庫)
・藤沢 周平
【文藝春秋】
発売日: 1992-09
参考価格: 620 円(税込)
販売価格: 620 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円~
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・藤沢 周平
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カスタマー平均評価: 5
用心棒日月抄第5巻? タイトルを読むと、かっては用人まで出世しながら、今は隠居した老人の、老いの日々を綴ったものに読め、それは間違いではないのですが、ある藤沢周平さんのファンのHPにも、用心棒日月抄の第5巻とあったように、実際の内容は、隠居した主人公が、釣りや、酒、息子夫婦との日常生活の一方で、かっての藩内での地位を活かし、藩内の政争にまで巻き込まれ、それを解決してしまう活躍ぶりを描いたものになっており、まさに、用心棒日月抄5巻と紹介してもよさそうな内容になっています。
ある意味、裏切られた内容にはなっているのですが、藤沢周平さんならではの、老いについいての料理の仕方もあり、面白く、また、考えながら読める本になっています。
「梅の一枝」にさえ命をいとおしむ心持 2008年の水無月は、胸の痛む通り魔事件や東北の地震など切ない月でした。物価も値上げ値上げできゅうきゅうしております。働き盛りの40歳、後を振り返る暇もなく毎日が過ぎてまいります。
御用人時代の三屋清左衛門も、そんな心持だったのでしょうか?
日残りて昏るるに未だ遠し・・・。
なんと読みやすく、そして清左衛門の爽やかな人となりなのか。澱みに浮かぶ権力争い。三屋清左衛門
が切れ者として重宝がられるのも、その柔軟な姿勢と剛健な精神のバランス感覚に優れたゆえんではないかと思うのです。権力争いばかりではなく、夫婦の心、友のこと、泣き妻への悔恨に漣立つ心。三屋清左衛門は隠居しても慕われ、なお諸事に力を尽くし、何より「梅の一枝」にさえ命をいとおしむ。
昨年、本当に遅ればせながら「蝉しぐれ」をドラマで見、そして原作を読み藤沢周平の世界に入ったばかりの新参者です。三屋清左衛門残日録もドラマと並行して原作を楽しむ至極の時間を味わえました。
このような味わい深い作品に出会えて幸せです。
こんな年寄りになりたいものです。諸事に力を尽くし、何より「梅の一枝」にさえ命をいとおしむ心持
。それは遥か先のことではないと思います。日々を懸命に過ごしていたら辿り着いた日々。これより私の行く道を照らしてくれるそんな作品との出会いでした。ドラマと併せまして最大級の御勧めです。
老境を赤裸々に描いて新境地を開いた秀作 さる藩の元傍用人の清左衛門の引退後の日々の生活を小事件を交え淡々と綴ったもの。清左衛門は引退して早く"暇になる"事を夢見ていたが、いざ暇が出来ると寂寞間に襲われる。会社員の私にも良く分かる現代にも通じる心境である。このままではいけないと、勉学や武道、そして釣りに励む決意をする。それと共に「残日録」と言う日記を書き始める。それが本書の内容である。「残日録」とは「後何日生きられるか」と言う消極的なものでなく、「日残りて昏るるに未だ遠し」と言う意気軒昂な証の由。
清左衛門は元用人という要職にあって、今では隠居の身であるから、藩内に顔が利く上に自由である。このため、藩内の公にはできない事件の解決をしばしば頼まれる。解決しても当然俸禄には繋がらない。だが、清左衛門は無為の生活ではなく、事件の渦中に飛び込む方を選ぶのである。事件と言っても、ハデな謎解きはなく、主に家中の人間模様の悲喜劇が描かれる。清左衛門自身に降り掛かる災厄もある。これも家中の人間関係の中から生まれる。清左衛門は清廉な性格で頭も切れるが、人が良過ぎてメガネ違いの事もある。嫁の里江の方が鋭いと思う事さえある。しかし、それもまた微笑ましい。年老いてから想う若き日の淡い思慕の念も共感を誘う。夫の浮気を疑う娘の悋気をキッカケに、藩の権力争いに首を突っ込む親バカ振りも見せる。公務を退いた後、無為に生きるのではなく、日々の暮らしの中のフトした出来事に喜び、悲しみ、怒り、悔恨を覚える清左衛門の様が理想的な余生の過ごし方に映る。四季折々の風景描写も物語に自然に溶け込み、清左衛門の心の移ろいを巧みに表現している。特に雷を頻繁にストーリーの分岐点に使っているのが印象的。
時代小説として優れているのは勿論、老境を赤裸々に描いて新境地を開いた秀作。
30代で読んでみました 蝉しぐれがよかったので、次の藤沢作品は何を読もう?と皆さんのレビューを読み倒しました(笑)。蝉しぐれと、こちらの作品が双壁のようなので、「この若さで読んで味わえるのか?」(←時と場合で、年とったり若くなったりします…)と不安でしたが…いい味わいでした。 連作短編なので、蝉しぐれより読みやすいと感じたくらいです。 そして様々な事件の間に入って、骨を折る清左衛門の働きは、現在の組織社会の中での課長を思わせるよう。実際に50年、60年と現実を生きてきた人の中から出てくる、知恵、経験を感じます。 蝉しぐれは叙情的ですが、こちらは落語的と言いますか、以前連続ドラマ化されたそうですが、しやすいと思います。とは言え、読む方の年齢なりの読み取り方があるでしょう。そういう味わいを感じました。 30代でこういう感想です。ご参考までに。
『人生後半に読むべき本』の推薦本 谷沢永一氏と渡部昇一氏の『人生後半に読むべき本』で推薦されていたので手にとってみた。藤沢周平は恥かしながら初めて読む。
隠居した初老の侍の身の回りで起こるちょっとした事件を描いたものでNHKの連ドラみたいだなぁと思っていたら、昔本当にやっていたそうだ。
初めて読んでよしあしを言うのもはばかられるが、重厚な文章と、渋めのストーリー展開がいい。描くのは変哲もない日常だが、ついつい引き込まれてしまう。
谷沢氏と渡辺氏は、小説を読むというのは自分にとっては現実逃避だ、というようなことを言っていたが、こういう本に出会うと確かに、その言葉がわかる気がする。作品世界にいつのまにか浸りきってしまって、読み終わって現実に戻った瞬間、ある種の虚脱感を味わう。
人生後半に読むべき本、ということだったが、まだ自分にはまだ早すぎるかな、と思った。もう少し年をとって、それこそ隠居して、しばらく現実に戻ってこなくてもいいような身分になってから、ゆっくり手にとってみたいと思う。
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隠し剣孤影抄 (文春文庫)
・藤沢 周平
【文藝春秋】
発売日: 2004-06
参考価格: 660 円(税込)
販売価格: 660 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円~
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・藤沢 周平
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カスタマー平均評価: 5
ただ強いだけじゃないのだ ただひたすら強いだけの剣豪小説も面白いのだけれど。
藤沢周平の世界では、そんな人は出てこない。
めっぽう剣の腕は立つけれど、酒と女にだらしなかったり、お金に抜け目なかったり。
この隠し剣シリーズでは、不倫している剣士や臆病で仕方ない剣士がいる。
ブスな女剣士もいる。ただし、このブス剣士、旦那のために果たし合いの身代わりを務め、見事的をやっつけ、「オレの間違いだった。これからは仲良くやろう」と改心させるという涙もの。
ほかにも、藩を守るためにいいように使い回され殺されてしまう人など、現代社会では命のやりとりはないけれど。
命を名誉や地位や富に置き換えれば、現代社会をよく観察している小説なのだ。
それでも、この本に出てくる8人の剣豪は、人生を後悔しない。
うーーん、ほれぼれする。
「秘剣」と「深遠な女性心理」の巧みな融合 数々の秘剣の呼称を各作品の題名に付け、その剣技の妙と共に男女の機微を描いた魅力溢れる短編集。特にヒロインの描写が玄妙を極め、剣技が霞む程。旧来の剣豪小説の枠をはみ出した意欲作と言える。秘剣の呼称を「邪剣」、「臆病剣」などと敢えてネガティヴに付けている所も心憎い。
「邪剣竜尾返し」は古代の歌垣を思わせる幻想的な冒頭から始まり、主人公の剣敵の妻の真意を中心として虚実が曖昧模糊としたまま物語が終ると言う奇譚。「臆病剣松風」は「たそがれ清兵衛」を思わせる内容で、ホノボノとした夫婦愛が微笑ましい。「暗殺剣虎ノ眼」は一見平凡な藩の権力闘争と見せかけて、結末でヒロインと読者を闇に落とす手法が卓抜。「必死剣鳥刺し」は主人公の過酷な運命と対比するかのような結末のヒロインの明るさと逞しさが物語に救いを与えている。「隠し剣鬼ノ爪」は木目細かい自然描写を背景に、秘剣の意外な用途、妖艶な美女の悲哀、純情な娘の可憐さが一体となって描かれた秀作。「女人剣さざ波」は既読だったが、何度読んでもヒロインの一途さと健気さに胸が熱くなる傑作。「悲運剣芦刈り」は男女の業の深さを扱ったものだが、秘剣の運命以外はやや平凡か。「宿命剣鬼走り」は二人の藩士と、二人が想いを寄せる尼の数十年に渡る宿縁をミニ大河ドラマ風に描いた異色作。
迫力ある剣技と深遠な女性心理と言う男性にとって魅力的な二大テーマを巧妙に織り交ぜて描いた時代小説の傑作短編集。
読み始めると止まらない!! はじめて触れた藤沢周平氏の作品が本作でした。
『秘剣』を授けられた剣客8人のそれぞれのドラマが、各編にギッシリと詰まっていて、読む者を飽きさせない作品でした。
主人公たちはただ単なる剣を極めた武士ではなく、弱さや優柔を持った武士であり、藩命や愛する人の窮地を救うために秘殺剣を使う。
作品中の臨場感やストーリー展開が読者を釘付けにします。
時代小説に縁のない方にぜひ一読をお勧めしたい作品です。
『武士の生き様』を描いた味わい深い短編集 一撃必殺の技。ただひとりに伝承され、それを受け継ぐ剣客8人。そうした秘剣の
継承者でありながら、彼等はほとんどが下級武士で不遇のうちにある。そんな彼ら
が時に運命に、時に己の心の弱さに翻弄され、その剣を抜く。
彼らの行動とその行く末に、彼らの武士の意地、義を重んじる心、事を前にした
潔さといった、『武士の生き様』が真っ直ぐに描かれており、どことなく憧れとも
郷愁とも似た想いを感じられるような、味わい深い短編8作が収められている。
個人的には、
・必死剣鳥刺し
・悲運剣芦刈り
・宿命剣鬼走り
に感銘を受けた。この世界観は作者独特の境地だろう。時代小説ファンなら思わず
唸る作品だと思う。
巻を措く能わざる面白さ 小説としての完成度は、全体的には『隠し剣秋風抄』の方が高いとみますが、悲話の多い本書も、忘れがたい名編ぞろいの作品集でした。特に、巻末の中編である「宿命剣鬼走り」は、森鴎外の「阿部一族」を思わせる滅びの美学に満ちた佳品で、読後しばしの間立ち上がることができませんでした。とにかく一読をお薦めします。
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[ 文庫 ]
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麦屋町昼下がり (文春文庫)
・藤沢 周平
【文藝春秋】
発売日: 1992-03
参考価格: 570 円(税込)
販売価格: 570 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 1円~
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・藤沢 周平
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カスタマー平均評価: 5
珠玉の4作。特に「榎屋敷宵・・」のお内儀剣士は最高! 私の好きな「これぞ武士、これぞ時代劇!」という短編4作。
■ 「麦屋町昼下がり」
でたー!久々に“秘剣”もの(ヨッ!寅ッ!待ってましたー!)。
―「不敗の剣」―
天賦の剣才も、この“秘剣”さえあれば・・・・・
え?呑んじゃって大丈夫?
■ 「三ノ丸広場下城どき」
そうだ、殺っちゃえ、殺っちゃえ!
いくら身分が違えども、
「お主、何たるものぞ。それがしの剣を受けてみよ!」
■ 「山姥橋夜五ツ」
武士として、これは辛いでしょう? いくら妻が潔白でも・・。
「武士の一文」をチラッと思い出しました。
最後の3行はほんのちょっとの藤原流お色気、安心、安心。
■「榎屋敷宵の春月」:
久々の女剣士もの、しかもお内儀。
女性で、剣が強くて、しかも人妻(350石のお偉い旦那は気弱)。
しかも刺客を遣っ付けちゃうんだから気分爽快。
旦那をにらめつけて戦いに行っちゃう所がすごい!
ここまで強い内儀キャラは、藤原作品で読んだことがない。
堪能の一冊 「麦屋町昼下がり」――タイトルからしてそそられる。まるで西部劇だ。読み始めると、日々の偏執狂的価値観に翻弄されていた頭が、通常営業的な正常さで働きだす。脳みそがサクサクと、ごく自然な人情活動、緊張&弛緩活動を始める。心地よさの始まりだ。えぐられる快感。たちまち引き込まれていく。これだこれだ。この感覚こそが俺に藤沢周平を読ませるのだ。本格短編(?)とでも言おうか、堪能の一冊。
一挙に読ませる面白さと、読後の爽快感を持った本です 昭和62~64年にかけて雑誌に連載され好評を博した中篇4編をまとめた本ですが、何れも読切りの中篇ですので、各編の間に、「用心棒日月抄」を始めとするシリーズ物のような明確な統一性はありません。ただ、共通していえるのは、何れも、どちらかといえば負の側面を負った人々、例えば、妻同士が友人の藩士に出世競争で負けた男、今は藩の重鎮となった昔の剣友にこけにされた男らが、藩の密謀等にふれていくうちに、いつしか、彼らをこけにした人々を打ち負かしてしまうことでしょうか。そこには、不器用だけれども、愚直に生きる人々に注ぐ著者の暖かい眼差しがあります。また、男たちが密謀にふれていくあたりの展開も、著者の素晴らしい筆致で描かれていますので、ぐいぐい読める面白さと共に、最後のどんでん返しに爽快感も味わえる本です。
素晴らしい決闘シーン、藤沢文学の最高峰 いささか逆説めいていますが、この4篇の短編集は、藤沢文学にはあまり見られない特徴があります。それは「ドライな決闘場面」といえるものです。 藤沢文学は、私なりに解釈すれば、日本人の深い情感をあますところなく描いた、いわばウェットなものだと感じています。 したがってこの4篇のドライな感覚は読んでいて驚くと同時に、今までにない小気味良さというものまで感じてしまいます。しかし最後に読み手の心をぐっと、ぐぐっとひきつけるあたりは、さすがに藤沢周平ですね。 昔、ゲーリー・クーパー主演の名作西部劇「真昼の決闘」というのがありました。決闘の様子を非情に刻々と描き、見る人の心を緊張させたものでした。私見によれば、「麦屋町昼下り」は、藤沢版「真昼の決闘」です。推薦。
素晴らしい決闘シーン、藤沢文学の最高峰 いささか逆説めいていますが、この4篇の短編集は、藤沢文学にはあまり見られない特徴があります。それは「ドライな決闘場面」といえるものです。 藤沢文学は、私なりに解釈すれば、日本人の深い情感をあますところなく描いた、いわばウェットなものだと感じています。 したがってこの4篇のドライな感覚は読んでいて驚くと同時に、今までにない小気味良さというものまで感じてしまいます。しかし最後に読み手の心をぐっと、ぐぐっとひきつけるあたりは、さすがに藤沢周平ですね。 昔、ゲーリー・クーパー主演の名作西部劇「真昼の決闘」というのがありました。決闘の様子を非情に刻々と描き、見る人の心を緊張させたものでした。私見によれば、「麦屋町昼下り」は、藤沢版「真昼の決闘」です。推薦。
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[ 文庫 ]
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密謀 (下) (新潮文庫 (ふ-11-13))
・藤沢 周平
【新潮社】
発売日: 1985-09
参考価格: 540 円(税込)
販売価格: 540 円(税込)
( 在庫あり。 )
中古価格: 12円~
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・藤沢 周平
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カスタマー平均評価: 4.5
歴史のなぜ?がおもしろい 三成と兼続の間には密約があったのか?
なぜ上杉家は、関ヶ原に向かう家康を
追撃しなかったのか?
そんな疑問に答えてくれます。
義を重んじ家康に挑戦した直江状。
軍神と呼ばれた謙信の家を
存続させるために取った決断。
おすすめの作品です。
歴史が嫌いでも 大丈夫! 大いに楽しめます! 亡き著者55歳の作品。
来年2009の大河ドラマ 直江兼続の「天地人」がまさにこの本の内容。その影響で今また脚光浴び、本の帯も新しくなって、さぞや著者も喜んでいることでしょう。
また、同郷で、且つ、直ぐ近くに春日山城がありながらも、全く上杉謙信、景勝、直江兼続の知識が無かったそれがしも、しっかりお勉強させていただきました。感謝 感謝!
これでもか!これでもか!!と言うくらいに戦国武将が出てきます。時代小説が好きでも、歴史上の人物が登場する本が大嫌いで今まで避けてきた分、当然全く無知だった部分にたっぷり知識が蓄積されました。
そうか、豊臣秀吉はこういう人物で、織田信長はこうで、徳川家康はこんなやつだったか?
更に、石田三成がこうで、上杉謙信、景勝の「義」とはこうで、直江兼続はこんなだったか?
そうこう言いながら、
この(下巻)はワクワクしながら読みました。さすがは藤沢周平さん、この人の本でなければ絶対に読んでなかったことは言うまでもない。
更に、最後ほのぼのさせてくれる場面は、この著者独特のもの、思わず苦笑いしてしまいました。
火坂雅志著「天地人」NHK出版 とは全く違った、小説家 藤沢周平の世界が堪能できます。
■お薦め度:★★★★★(戦国武将がほとんど出てくることを覚悟の上で読んで下さい。でも、超お薦めです)
時代とは。 二つの謎がある。なぜ上杉は、地理的に不利な豊臣方に荷担したのか。なぜ上杉は関が原のとき参戦しなかったのか。結局「謙信以来の誇り」ということなのだろうと思う。それだけではよくわからないという人は本書を読んで欲しい。といっても、あまりにもさらりと書いているので、私には少々不満だった。(こここそが眼目だろうに)けれどもじつはこれは眼目ではなかったのかもしれない。戦国時代時代に翻弄される藩を描いて、現代の会社を連想する人多いだろう。そういう翻弄する波の姿こそを描きたかったのかも。最後、草たちのそれぞれの運命が清清しい。
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